就労継続支援B型事業所を運営するうえで、近年ますます重要になっているテーマのひとつが「工賃向上」です。利用者の障害特性や体調に配慮しながら、生産活動の機会を確保し、少しでも高い工賃を支払える体制をつくることは、B型事業所に求められる大切な役割です。
その工賃向上の取組を評価する加算のひとつに、「目標工賃達成指導員配置加算」があります。このページでは、「目標工賃達成指導員配置加算」の概要と要件、注意点について専門の行政書士が分かりやすく説明します。
目標工賃達成指導員とは、工賃目標の達成に向けて、各都道府県が作成する工賃向上計画に基づき、事業所自らも工賃向上計画を作成し、その計画に掲げた工賃目標の達成に向けて積極的に取り組むための指導員をいいます。
具体的な取組例としては、生産活動収入の向上を目指した受注促進、障害者優先調達推進法に基づく物品・役務の受注、地域と連携した農福連携等による新たな生産活動領域の開拓、ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上などになります。
つまり、目標工賃達成指導員は、現場で作業を見守るだけの職員ではありません。販路開拓、作業工程の見直し、単価交渉、品質管理、地域企業との連携、新規事業の検討、利用者の能力に応じた作業設計など、工賃向上に直結する取組を推進する役割が期待されています。
目標工賃達成指導員配置加算は、就労継続支援B型サービス費Ⅰまたは就労継続支援B型サービス費Ⅳを算定する指定就労継続支援B型事業所において算定するものとされています。つまり、B型であればどの報酬体系でも当然に算定できるわけではありません。
就労継続支援B型サービス費ⅠとⅣは、いずれも従業者の員数が利用者数を6で除して得た数以上、いわゆる6:1以上の人員配置を前提とする基本報酬区分です。
サービス費Ⅰは、工賃向上計画を作成し、前年度の平均工賃月額に応じて報酬区分が決まる類型です。サービス費Ⅳは、サービス費Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを算定しない場合に用いられる区分で、平均工賃月額ではなく、利用定員と人員配置に応じて算定されます。
目標工賃達成指導員配置加算は、この6:1以上の体制であるサービス費ⅠまたはⅣを算定している事業所が、さらに目標工賃達成指導員を常勤換算で1人以上配置した場合に対象となります。
また、目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置するだけでなく、当該目標工賃達成指導員、職業指導員、生活支援員の総数が、利用者の数を5で除して得た数以上であることが必要です。これは、いわゆる「5:1以上」の手厚い支援体制を求める趣旨です。
算定対象となる事業所
●就労継続支援B型サービス費Ⅰまたは就労継続支援B型サービス費Ⅳを算定する事業所であること
●目標工賃達成指導員を常勤換算で1人以上配置すること
●当該目標工賃達成指導員、職業指導員、生活支援員の総数が、利用者の数を5で除して得た数以上であること
報酬単価は、利用定員に応じて次のように定められています。
| 利用定員 | 単位数 |
|---|---|
| 20人以下 | 45単位/日 |
| 21人以上40人以下 | 40単位/日 |
| 41人以上60人以下 | 38単位/日 |
| 61人以上80人以下 | 37単位/日 |
| 81人以上 | 36単位/日 |
報酬告示では、目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置し、施設基準に適合するものとして届け出た指定就労継続支援B型等について、サービスを行った日ごとに所定単位数を加算するとされています。
名称が似ている加算として「目標工賃達成加算」がありますので、違いについてご説明します。
「目標工賃達成加算」は、目標工賃達成指導員配置加算の対象となる事業所が、都道府県の工賃向上計画に基づき、自らも工賃向上計画を作成し、その計画に掲げた工賃目標を達成した場合に、10単位/日を算定する加算です。
簡単に整理すると次のようになります。
目標工賃達成指導員配置加算:「工賃向上に向けた人員体制」を評価する加算
目標工賃達成加算:「工賃目標を実際に達成した結果」を評価する加算
目標工賃達成指導員配置加算を算定している事業所は、将来的に目標工賃達成加算の算定も見据え、工賃向上計画の作成、進捗管理、実績確認を日頃から丁寧に行うことが大切になります。
この加算で特に注意したいのは、職員名簿上「目標工賃達成指導員」として位置付けているだけでは足りないという点です。
加算の趣旨は、工賃向上に向けた実効性ある取組を評価することにあります。そのため、次のような書類や記録を整備しておくことが重要です。
まず、勤務形態一覧表等で、目標工賃達成指導員が常勤換算で1人以上配置されていることを確認できるようにしておく必要があります。
次に、職業指導員・生活支援員を含めた総数が、利用者数に対して5:1以上となっているかを毎月確認します。
さらに、工賃向上計画、年間目標、月次の取組記録、受注活動の記録、売上・経費・工賃支払額の推移などを整理しておきましょう。
工賃向上計画は作成して終わりではありません。計画に掲げた目標に対して、どのような受注活動を行ったのか、どの作業の収益性を見直したのか、利用者の作業能力向上のためにどのような支援を行ったのかを、継続的に記録しておく必要があります。
これらの記録を整備しておくと、運営指導の際にも安心です。
代表の松下愛です。
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目標工賃達成指導員配置加算は、就労継続支援B型事業所における工賃向上の取組を後押しする重要な加算です。ただし、算定のためには、対象となる報酬体系、人員配置、常勤換算、5:1以上の体制、工賃向上計画に基づく実際の取組など、複数の要件を満たす必要があります。
この加算を適切に活用するためには、「加算を取るために職員を置く」のではなく、「工賃向上を実現するための中心的役割を担う職員を明確にし、その取組を記録に残す」という視点が大切です。
工賃向上は、利用者のやりがいや社会参加、生活の安定にもつながります。
事業所としては、制度上の要件を正しく理解したうえで、地域資源や企業との連携、生産活動の見直し、利用者一人ひとりの力を活かした作業づくりに取り組んでいくことが求められます。
幣事務所では事業者さまと共に考え、最適なご提案を通して安心で安定した事業所運営のお役に立つことが願いです。
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